ブロックチェーンゲーム「De:lithe Last Memories(ラスメモ)」が仮想通貨GEEK関連のサービス終了を発表しました。ゲーム自体が終わる訳ではありませんが、web3ゲームとしての終焉とも言えます。
ドールや装備は今後もNFTとして存在はしていますが、以前のようにOpenSeaなどの外部マーケットでの取引でも再開しない限りは、ゲームで仮想通貨を稼ぐってことはできません。
ラスメモから離れる人も後を絶たず、すでにサービス終了した際の払い戻しについて考えている人も結構います。
ソシャゲにおける未使用分の有償石は、プリベイトカードのような性質であるため、資金決済法を法的根拠として返金を求めることができます。
しかし、ラスメモの場合、いわゆる『有償石』といっても、お金を払わないで獲得した有償xGEEKも存在します。
ゲーム内通貨xGEEK(有償/earn/lite)の種別・入手経路・利用方法を整理したうえで、サービス終了時における資金決済法上の払い戻し可能性の有無について考察します。

資金決済法の基礎:第20条第1項の概要
資金決済に関する法律 第20条第1項
「前払式支払手段(=いわゆる“有償石”など)に該当する電子的価値であって、未使用残高がある場合、原則としてサービス提供者には払い戻し義務が生じる(特定条件を除く)」
- 【該当の要件】
✅ 有償で発行されている
✅ 対価として物品/サービスと交換できる
✅ 自社内サービスで使える(第三者利用が不可)
→ これらを満たせば「前払式支払手段」として払い戻し義務が発生し得る。
どのソシャゲでもこれを根拠にサービス終了時の返金義務が発生しています。
ラスメモの前身であるenishの「De:Lithe」も、規約では一切返金しないとしていても、サービス終了時には未使用分の有償石の払い戻しをしています。
ただし、ラスメモの場合はいわゆる「有償石」でも有償発行分と無償発行分が存在するので、単純に未使用だから払い戻せるという話にはならないかもしれません。
xGEEKの種別と定義
種別 | 入手方法 | 規約上の区別 | 使途 | 備考 |
---|---|---|---|---|
xGEEK(有償) |
・ゲーム内課金 ・仮想通貨$GEEKによる購入(マイページ経由) ・xGEEK(earn)からの変換 |
有償 | 刻印BOX開封、マーケット取引など全用途 | 入手経路にかかわらず、ゲーム内では区別されない |
xGEEK(earn) |
・BOX残高消費の狩り ・マーケット取引 ・ランドダンジョン収益 ・ステーキング報酬 |
無償 | 有償石に変換可、直接消費でADP獲得、有償と同様に全用途 | WPでは100xGEEK=約1ドル固定 |
xGEEK(lite) |
・xGEEK(earn)→有償変換時の“おまけ” ・xGEEK(有償)購入時の“おまけ” |
記載なし | 刻印BOX開封可、マーケットでは使えない(GEEKサービス終了後は使用可) | 他のゲームで言うところの「無償石」的立ち位置 |
◆ xGEEK(有償)
規約でもゲーム内でも同じ「xGEEK(有償)」と表記されています。
通常のソシャゲなら「有償」か「無償」の区別だけで済む話ですが、ラスメモの「有償」は無償で発行されたものもあるため、それが前払式支払手段といえるのか、つまり返金対象になるのかというのが争点です。
規約では払い戻しを行わないことが明記されていますが、ここでは冒頭の利用規約15条にある「当社の責めに帰すべき事由」という例外的な返金、すなわち資金決済法第20条に基づく返還義務について論じます。

✅ 明確な払い戻し義務が発生する場合
アプリ課金による直接購入は、資金決済法における「前払式支払手段」に該当するため、たとえ利用規約で払い戻しをしないといっても、サービス終了時における未使用分の返還義務は免れないでしょう。
ただし、後述する入手経路が違うxGEEK(有償)が混在していて区別が出来ない場合、技術的な問題を理由として返還に制限がかかる可能性も否定できません。
⚠️払い戻し義務が発生する可能性アリ
マイページ経由で仮想通貨GEEKによるxGEEKの購入分は、料金を支払って購入したとも言えますが、法定通貨で支払ったものではないため、議論の余地ありです。
資金決済法の条文上は、前払式支払手段の定義として「対価を得て発行される証票等~」とされているため、対価であるならば仮想通貨も当てはまるように思えますが、実務上の運用(行政解釈)は金銭を対価として支払ったものと定義されています。
そして、「金銭」の意味は法定通貨であり、仮想通貨は該当しません。
明文化されていないものについて、学説だとか法解釈の余地が~とか言っても、結局は実務上の運用に従うので、もし明確に法定通貨購入分と仮想通貨購入分と区別できるのであれば、マイページで購入した分は対象外かもしれません。
ただし、対象となる可能性もありますので、後述します。
❌払い戻し対象外になり得る場合
ゲーム内のxGEEK(earn)ショップによる、xGEEK(earn)⇒xGEEK(有償)への変換は、料金を支払ったものではありません。
xGEEK(earn)の元手が有償によるNFT由来であると認められれば、その範囲で払い戻し対象と解釈できる可能性は否定できませんが、liteで刻印BOXを開けたものを、元手が有償であると主張するのは無理があるでしょう。
ラスメモミニの報酬等、完全無課金でNFTを入手する手段もあったため、有償由来だと証明することは困難です。
ただし、これについても対象となる可能性がありますので、後述します。
xGEEK(有償)は一律『有償石』となり得るか?
他のソシャゲでは有償石と無償石の区別が明確なので問題になることはないでしょうが、ラスメモの『有償』は一律に有償と言えるのかがポイントです。
課金した履歴自体は当然残るものの、保有しているxGEEK(有償)を、運営側で入手経路の区別が可能かどうかによって、結果は変わるものと思われます。
なお、規約上のxGEEK消費の順番は、入手が新しいもの→古いもの→無償 となっています。
普通は無償石が先だし、実際、xGEEK(lite)から先に消費されるじゃん!って思うでしょう。
規約上は『無償』とはxGEEK(earn)のことなのです。
xGEEK(lite)はリリース後に新たに設定されたものなので、規約上は存在しないのです。
そしてゲーム内の表示では、有償は入手が古いものから先に消費されると記載されてます。
そう、こういう表記のあちこちに矛盾が多いのです。
明確に言える実際の消費順は xGEEK(lite)→xGEEK(有償)→xGEEK(earn) です。
もう、余計にゴチャゴチャになっているので、「この部分は購入したものです」って証明は難しそうです。
また、たとえ証明できたとしても、ゲーム内で一律に表示・管理され、入手経路の区別が不可能な場合、技術的な返金の困難性を理由に、実際の返金には制限がかかる可能性が高いようです。

ただし、区別できなければ無償発行分も法の適用対象
一般社団法人日本資金決済業協会のよくある質問(Q13)の回答によれば、
”無償ポイントは、利用者から対価を得て発行することがなく、無償でのみ発行されることから、前払式支払手段には該当しません。”
そして、
”なお、前払式支払手段に該当するポイントを一部無償発行する場合には、Q14をご確認ください。”
と続きます。
【前払式支払手段に該当するポイントを一部無償発行】
これがxGEEK(有償)のearnからの変換部分に該当するように思えます。
そしてQ14の回答は次のとおりです。

つまりxGEEK(有償)のうち、
earn変換の有償xGEEK(無償発行分)とショップ購入の有償xGEEK(有償発行分)が、
①区分表示と②区分管理を満たしていなければ、
無償発行分も法の適用対象となる。
と記載されています。
もっとも、この「法の適用対象となる」という言葉も、上記の”発行額・回収額・未使用残高に計上が必要となる”という法律上の処理に関することのみを指しているとする可能性もありますが、資金決済法20条第1項の払い戻しに関する前払式支払手段の適用対象となる有償石の定義として、earnから変換した有償xGEEKも対象となると主張する根拠になり得るでしょう。
そして、区分表示、区分管理とは以下のことです。

保有するxGEEKの表示は、ゲーム内でもマイページでも見ることができますが、xGEEK(有償)、xGEEK(earn)、xGEEK(lite)の3つに区別されています。
しかし、前払式支払手段に該当するxGEEK(有償)の内訳は区別されていません。
つまり①の区分表示で、無償発行分と有償発行分が利用者から見て区別不可能であるため、たとえ発行者側で②の区分管理を満たしていても、無償発行分も法の適用対象となると言えます。

⚠️ 補足
- xGEEK(earn)→ xGEEK(有償)への変換が可能である場合、「変換後は有償石」として認識されるが、その出自によっては資金決済法上“疑似有償”と見なされる余地がある。
- → 国の見解としては「技術的に区別ができない場合は、全体を有償としてみなすこともある」とした過去の指導事例あり。
- 「xGEEK(earn)から変換したxGEEK(有償)」を全て“有償扱い”としてよいとは限らない。
→ 法的には「変換元の原資が無償かつ自社発行であれば、その範囲では返金義務がない」と整理される可能性がある。
◆ xGEEK(earn)
規約上は獲得方法から見てわかるように、xGEEK(無償)に当てはまります。
有償に変換できる上liteまで付いてくるし、earnを直接使用すればADPも付与されるので、有償xGEEKよりも価値があるように感じますが、規約上は無償扱いです。
ただ、いわゆる無償石かと言うと、だいぶ性質が違います。
有償で購入したNFTを元手として獲得したxGEEK(earn)、xGEEK(lite)で開封した刻印BOX由来、ラスメモミニの報酬の完全無課金NFT由来と、入手経路は様々ですが、それらを区別して個別に精査するのは現実的ではないでしょう。
ホワイトペーパーでは100xGEEK=1ドルとされていたことから、同等金額で返金されるのが筋のように感じますが、規約上価値を保証するものではないとされています。

❌ 払い戻し義務なし
- 基本的にゲーム内活動やNFTから得られるもの。
- 規約上も「無償扱い」であると明示されていれば、返金義務は発生しない。
過去のAMAの質問に対する回答として、サービス終了してもxGEEK(earn)は返金しないとの旨の記載がありました。(運営の直接の答えではなく、開催者によるまとめの中の一文ですが)
これがxGEEK(有償)にしておけば返金されるという解釈の拡大にもなっているようです。
GEEK関連サービス終了に伴い、一定期間内にxGEEKを交換できる機能が実装されました。
1xGEEK ⇒ 30,000 $GEEK の交換レートが示されましたが、デリストされた今となっては、$GEEKの価値を決定できません。TealSwapで取引すれば、OASにすることは出来ます。
保有特典MAXに相当する6億$GEEKが1,000~2,000円程度です。
流動性が低いので売買されれば大きく変動しますが、これまで100xGEEK=1ドルだったものが、10円以下です。
この交換した分が配布され、一斉に売られれば当然もっと値は下がるし、そもそも取引が成立しないかもしれません。
そんな雀の涙ほどのものを手に入れるくらいなら、xGEEK(有償)にして、サービス終了時の払い戻しに期待するという人が一定数いるようです。
xGEEK(earn)のまま様子見している人もいるようです。
ラスメモを続けるつもりでゲーム内で消費するなら、earnショップ限定の特別なアイテムが販売される可能性もあるので、持っていてもいいかもしれません。
変換出来るだけのearnLvさえ残しておけば、とりあえずはいつでも変換できますからね。
うっかりBOX残高を全消費してearnLvが消滅しないように、NFTを避難させておく必要がありますが。
100xGEEK(earn)=1ドル固定とは言ってましたが、「これだけは死守したい」「これが崩れる時はラスメモが終わるとき」と言っていたように、あくまで「なんとかして守りたい」と言ってただけで、絶対的に保証するものではありません。
規約にも書いてあるし、崩れる可能性はあり得ると最初から認識できたことなので、100xGEEK(earn)を1ドル相当として返金を求めることは無理でしょう。
規約で無償石として明示され、資金決済法のガイドライン等に基づいても前払式支払手段に該当しないのであれば、earn自体を払い戻し対象として訴求するよりは、変換した有償xGEEKを払い戻し対象だと主張した方が可能性はあるかもしれません。
ただ、ホワイトペーパーやAMAで「100xGEEK(earn)=1ドル固定」と謳ってNFTを販売していたことに関しては、景表法違反や消費者契約法、民法上の債務不履行など、問題がない訳ではないです。

◆ xGEEK(lite)
規約には定義されていません。規約は2024年4月に制定されたものですが、xGEEK(lite)はリリース後に不正対策として分けられたものです。
お得なxGEEKパックを購入して、マケプレでの複垢自己売買でxGEEK(earn)に変換するという錬金術が出来てしまっていたことから、おまけ分をxGEEK(lite)とし、マケプレで使用出来ないものとして生まれました。
他のゲームにおけるいわゆる無償石に当てはまります。
ただし、規約上のxGEEK(無償)とは、このliteではなく、earnのことを指します。
❌ 払い戻し義務なし
- おまけ扱いであり、使用制限がある(マーケット取引不可だったが、GEEKサービス終了後は全用途使用可能)。
- 明確に「有償ではない」ことが利用規約や運用上に示されていれば対象外。
xGEEK(lite)に関しては明確に前払式支払手段に該当しないので払い戻しの対象外です。
ちなみに、もともと無償石みたいな扱いのロギコは、規約上ではジェムに該当します。
Ronin対応が進んでいたら、そこにさらにLITHEとxLITHEが加わってました。
もしかしたらxLITHEもさらに有償、earn、liteに分かれたかもしれませんね。

まとめ
もしラスメモがサ終した場合、資金決済法第20条に基づく未使用分の有償石が払い戻しされる場合に、どの範囲が返還義務のある前払式支払手段に該当するのかについて見てきました。
ざっくり分けると以下のようになりそうです。
✅ 払い戻し対象とみなされるケース:
- アプリ内課金で直接購入したxGEEK(有償)
→ ただし、無償発行分のxGEEK(有償)との区別が技術的に困難であることを理由に制限がかかる可能性もあり
⚠️ 灰色ゾーン(微妙な事例):
- 公式マイページから$GEEKで購入したxGEEK(有償)
→ 仮想通貨で購入した有償石は前払式支払手段にならない可能性あり - xGEEK(earn)を変換したxGEEK(有償)
→ 有償石の無償発行分に該当するが、区分表示で区別できないため、有償発行分(前払式支払手段)と同様に扱われる可能性も否定できない
❌ 払い戻し対象外:
- xGEEK(earn) → 有償に変換できる以上、そっちで争った方が現実的かも
- xGEEK(lite) → (ヾノ・∀・`)ナイナイ
- ロギコ → ある訳ない
あらかじめお金を支払ったNFTから生み出したものなのだから…と言っても、完全無償で生み出したearnも存在する以上、区別が明確でない限りは「有償」だから全て返金…という単純な話ではなさそうです。
また、NFTのBOX残高を消費してxGEEK(earn)を稼げる仕様のため、まるでNFTがプリベイトカードみたいに感じますが、NFTは前払式支払手段ではないので資金決済法第20条を根拠とした返金の対象にはなりません。
資金決済法の保護法益を考えた場合、xGEEK(lite)で開封した刻印BOXを元に稼いだxGEEK(earn)を変換した有償xGEEKが「返金」っていうのはそぐわないかなという感じはします。
ただ、明確な区別・管理が出来ていないのなら、可能性は否定できないという話です。
そもそも表示はあるのか?
利用規約の15条に資金決済法に基づく表示について記載があります。
この表示に前払式支払手段と記されたコンテンツについては、前述の論法に則って払い戻し対象になる訳ですが、その他のコンテンツは前払式支払手段に該当しないと記載されています。

ゲーム内に資金決済法に基づく表示が見当たらないんですよね。
特定商取引法に基づく表示はあります。両方表示しているアプリもあれば、同様に資金決済法に基づく表示が見当たらないアプリもあります。
表示義務違反なのか、探し方が悪いのか…全てが前払式支払手段に該当しないなんてことはさすがにないはずですが。
特定商取引法に基づく表示と同様の内容だったとしても、何の法に基づくものなのか明記しないといけなかったような気がするんだけどなぁ。

実際には有償石についての返金をどのように発表するかわかりません。
色々と穴がありそうなので、いくら運営側にとって都合の良いように主張しても、然るべきところに通報すれば問題が浮き彫りになりそうな気がします。
自分も現時点で有償とearn合わせて9万xGEEKほどありますが、アプリで課金したのはマンスリーパスとスターターパック等くらいだから、5万円くらいですかね。
NFTはランドも含めてそこそこ買いましたが、購入費用の倍以上稼げたのでラスメモに対して何か返せなんて思いは自分には全くないです。
ゲームをやっててこんなに稼げてしまっていいのだろうかと思いましたが、運営側からしたら全然よろしくなかったです。
もっと長く遊んで2年後くらいに半分程度戻ってきたら嬉しいな〜ってくらいに考えてたのですが、1年持たずにweb3要素が破綻は残念です。
残りはゲーム内で消費しようと思っていますが、そのゲームが雲行き怪しいんですよね…。
熱意をもって責任を果たしてくれれば、全然応援し続けるのに…。
バランスの悪さやコンテンツ不足は否めないけど、やっぱりプレイ自体は面白いんだけどな~。

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