キョウチクトウの枝でBBQすると人は死ぬ?平坂寛さんの体当たり検証と「7人死亡説」を調べた

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結論:今回の条件では異常なし。ただし「キョウチクトウは安全」ではない

結論からいうと、平坂寛さんが動画で試した条件では、キョウチクトウの枝を串にして焼いた肉や野菜を食べても、24時間後まで明確な中毒症状は確認されませんでした。

食事中から食後約30分まで喉にイガイガする感覚があったものの、それがキョウチクトウによるものかは不明。その後は体調に変化がなかったと報告しています。

さらに、2021年に発表された査読論文でも、キョウチクトウの生枝・乾燥枝で焼いたソーセージへ移った主成分オレアンドリンはごく微量でした。研究者らは、「キョウチクトウの枝を串にした料理で集団中毒が起きる」という話は、都市伝説である可能性が高いと結論づけています。

ただし、ここで絶対に混同してはいけないことがあります。

「枝を串にした食べ物から致死量の毒が移る証拠は乏しい」ことと、「キョウチクトウそのものが無毒である」ことは、まったく別の話です。

キョウチクトウの葉・花・茎・枝・根には、心臓に作用する強心配糖体が含まれます。葉や抽出液を直接口にして重症化した例、死亡した例は実在します。動画と本記事は、安全性を保証するものではありません。絶対に再現しないでください。

平坂寛さんが公開した、文字どおり体を張った検証

2026年8月23日、生物ライターで黒潮生物研究所客員研究員の平坂寛さんが、YouTubeに次の動画を公開しました。

『食べて検証!毒樹「キョウチクトウ」でバーベキューをすると本当に人は死ぬのか?』

動画の出発点は、キョウチクトウについて長年語られてきた、こんな逸話です。

1975年、フランスでキョウチクトウの枝をバーベキューの串に使い、男女7人が死亡した――。

図鑑、自治体や医療機関の解説、ネット記事などで繰り返し紹介されてきた話ですが、事故の場所、被害者、医療記録、報道といった一次資料がほとんど示されません。

平坂さんは動画内で、この逸話の条件にできるだけ近づけるため、次のような検証を行っています。

項目動画で行われたこと
キョウチクトウの生枝を切り、樹皮をむいて先端を加工
下処理樹液を落とさないよう、枝を洗わずに使用
食材肉や野菜を刺して炭火で加熱
食べた量大ぶりの串を2本分
食べた直後食材にかなり強い苦味。喉のイガイガ感が約30分
24時間後本人の報告では、明確な中毒症状なし

毒が移りやすそうな条件をあえて選び、苦味を感じながらも食べ切る。文章にすると数行ですが、致死性が疑われる植物を実際に口にする緊張と覚悟は、要約では伝え切れません。

本記事で検証の要点は紹介しますが、平坂さんの言葉、表情、検証の空気まで含めた本編は、ぜひ上の元動画で見てください。

「1975年フランスで7人死亡」は事実なのか

現時点では、実在を裏づける信頼性の高い一次資料を確認できません。

平坂さんが雑誌の企画で東京大学の植物学者・塚谷裕一さんと話した際にも、双方が調べた範囲では確かな資料へ行き着かなかったと、動画内で説明されています。大きな集団死亡事故であれば、症例報告、行政記録、当時の新聞などが残っていても不思議ではありません。しかし、広く出回っている情報の多くは「1975年・フランス・7人」という同じ短い説明を繰り返すだけです。

ここで興味深いのが、平坂さんとは別に、米国の医学研究者がすでに「キョウチクトウ串」を検証していたことです。

2021年の研究でも、串から移ったオレアンドリンはごく微量

2021年、『Journal of Medical
Toxicology』に、キョウチクトウの枝で焼いたソーセージにどれだけオレアンドリンが移るかを調べた査読論文が掲載されました。

研究では、キョウチクトウの生枝と乾燥枝をそれぞれ4本ずつ串にし、合計8本のソーセージを炭火で加熱。何も刺さずに焼いた対照試料も用意し、液体クロマトグラフィー質量分析法でオレアンドリン量を測定しています。

結果は次のとおりでした。

条件オレアンドリン平均濃度ソーセージ1本に含まれる量の上限
生枝7.0 ppb343 ng以下
乾燥枝14.3 ppb701 ng以下

研究者らは、重い中毒を起こす量と比べて無視できるほど少なく、この経路で人が中毒する可能性は低いと評価しました。論文が確認できた「串焼きによる中毒」の文献も、臨床情報が乏しく分析検査もない19世紀の報告に限られ、十分に記録された現代の症例は見つからなかったとしています。

つまり、平坂さんの人体での観察結果は、分析機器を使った先行研究ともおおむね同じ方向を示しました。

それでも「絶対に死なない」とは断定できない

動画は1人・1回の自己実験であり、医療機関で血液検査や心電図を取りながら行った臨床試験ではありません。論文にも、主に測定したのはオレアンドリンで、ほかの強心配糖体を完全に定量していないという限界があります。

また、枝の太さ、品種、季節、乾燥状態、加熱時間、食材、傷の入り方によって、移行する成分量が変わる可能性もあります。

したがって、今回言えるのは次の範囲です。

一般に語られる「枝を串にしただけで複数人が死亡した」という逸話は、現在確認できる証拠と整合しにくい。一方、あらゆる条件で安全だと証明されたわけではない。

これが、もっとも正確な結論でしょう。

キョウチクトウそのものは、本当に人を死なせ得る

串の逸話が疑わしくても、キョウチクトウの毒性まで疑ってはいけません。

キョウチクトウは公園や街路樹でも見かける身近な植物ですが、葉、花、茎、枝、根など全体に、オレアンドリンをはじめとする強心配糖体を含みます。これらは心筋細胞のナトリウム・カリウムポンプに作用し、心拍や電解質のバランスを乱します。

主な中毒症状には、次のようなものがあります。

  • 吐き気、嘔吐、腹痛、下痢
  • めまい、眠気、脱力、意識低下
  • 脈が遅くなる、動悸
  • 房室ブロック、心室頻拍、心室細動などの致死性不整脈
  • 高カリウム血症

日本の症例報告では、30代女性がキョウチクトウの葉を複数枚直接摂取し、嘔吐、下痢、傾眠、四肢の脱力、振戦、徐脈を発症。集中治療室で経過観察と治療を受けています。この方は回復しましたが、国内の死亡例も文献上報告されています。

「葉何枚なら危険か」については資料による差が大きく、摂取量だけで重症度を予測するのは困難です。少量に見えても、自己判断で様子を見てはいけません。

本当に避けるべきこと

今回の動画と研究から、「串で毒が移る量は想像より少ない可能性」が見えてきました。しかし、アウトドアでキョウチクトウを調理器具に使ってよい理由にはなりません。

少なくとも、次の行為は避けてください。

  • 葉、花、枝、樹皮、種子、根を口にする
  • 枝を串、箸、薪、かき混ぜ棒などに使う
  • 葉や枝を煮出して飲む
  • 剪定枝や生木を焚き火で燃やす
  • 樹液の付いた手で目や口を触る
  • 子どもやペットが口にできる場所へ剪定枝を放置する

自治体も、剪定枝や生木を燃やした煙は有害として、適切に処分するよう注意を呼びかけています。処分方法は地域によって異なるため、自治体の分別ルールを確認してください。

誤って口にしたときは、症状がなくても相談を

キョウチクトウを口にした可能性がある場合、自分で吐かせようとせず、すぐ医療機関または日本中毒情報センターへ相談してください。
家庭で無理に吐かせると、吐いた物が気管に入るなど、かえって状態を悪化させることがあります。

意識がおかしい、呼吸が苦しい、けいれん、強い動悸、ぐったりしているなどの症状があれば、ためらわず119番へ。残っている植物や写真があれば、種類の確認に役立つ可能性があります。

日本中毒情報センター「中毒110番」一般専用(365日24時間・情報提供料無料)

  • 大阪中毒110番:072-727-2499
  • つくば中毒110番:029-852-9999

※通話料は相談者負担。電話番号・受付状況は日本中毒情報センター公式サイトで最新情報を確認してください。

この検証に最大限の敬意を

ネットでは、出典の分からない話でも、何度も引用されるうちに「有名な実話」へ変わってしまいます。キョウチクトウの7人死亡説も、その典型かもしれません。

平坂さんの検証の価値は、単に「食べても平気だった」という刺激的な結果ではありません。誰も一次資料を示せないまま繰り返してきた話に対して、条件を考え、自分の身体を使い、観察結果を公にしたことにあります。

もちろん、一度の人体実験だけですべてを証明することはできません。それでも、危険を引き受けて実際の一例を示した行為は、外側から結果だけを消費してよいものではないでしょう。

だからこそ、本記事は動画の展開や言葉を置き換えて再生産するのではなく、検証の結論を正しく紹介し、先行研究と実際の中毒症例を重ねて、「何が分かり、何はまだ分からないのか」を整理することにしました。

元動画には、ここでは書き切れない本人の観察、判断、ユーモア、そして覚悟があります。興味を持った方は、ぜひ平坂寛さんのYouTubeチャンネルで本編を視聴してください。

まとめ

  • 平坂寛さんの検証では、キョウチクトウの生枝を串にしたBBQを食べても、24時間後まで明確な中毒症状はなかった
  • 食材には強い苦味が移り、食後約30分まで喉の違和感があったが、原因は特定されていない
  • 2021年の査読研究でも、枝からソーセージへ移ったオレアンドリンはごく微量だった
  • 「1975年にフランスで7人死亡」という逸話は、信頼できる一次資料が確認できず、都市伝説の可能性が高い
  • ただし、キョウチクトウの葉や抽出液などを直接摂取した重症・死亡例は実在する
  • 動画と研究は「キョウチクトウは安全」という意味ではない。絶対に真似をしない

今回の検証が突きつけたのは、「猛毒か、安全か」という単純な二択ではありません。毒性は本物でも、語られてきた事故の筋書きまで本物とは限らない。
危険なものだからこそ、恐怖を盛るのではなく、根拠を確かめて伝える必要があります。

参考資料

  1. 平坂寛「食べて検証!毒樹『キョウチクトウ』でバーベキューをすると本当に人は死ぬのか?」YouTube、2026年8月23日公開
  2. Jeffrey Suchard, Alexandra Greb, “Negligible Oleandrin
    Content of Hot Dogs Cooked on Nerium oleander Skewers
    ,” Journal
    of Medical Toxicology
    , 17, 57–60 (2021)
  3. 神戸将彦ほか「キョウチクトウ大量摂取の1例」北関東医学、70巻4号、359–362(2020)
  4. 公益財団法人黒潮生物研究所「客員研究員・平坂寛
  5. 三島市「キョウチクトウ(夾竹桃)にご注意ください
  6. 厚生労働省「有毒植物による食中毒に注意しましょう
  7. 公益財団法人日本中毒情報センター「中毒110番・電話サービス

※本記事は、動画の検証結果と公開されている医学・行政資料をもとに一般向けに整理したものです。個別の診断や治療の代わりにはなりません。

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