マンガの中で熊との戦闘シーンは数ありますが、その中でも圧倒的な画力と迫力ある戦闘描写といえば「ヴィンランド・サガ」です。
襲ってきた熊に対し、ナイフ1本で応戦する場面を紹介します。
ナイフで熊と戦えるか?
熊が出るような自然の中、アウトドアや山菜採りなどをしているような時に咄嗟に武器として使えるものといったら、ナイフくらいは持っているかもしれません。
そんなナイフでの戦闘シーンと実際の撃退した事案を見てみます。
ヴィンランド・サガでのヒグマとの戦闘シーン
11世紀初頭のヴァイキングたちの生き様を描いた漫画『ヴィンランド・サガ』でも、熊との戦闘描写があります。主人公トルフィン達はスカンジナビア半島西岸(ノルウェー)において、冬眠出来なかったヒグマに遭遇します。なお、現在ノルウェーにおいてヒグマは絶滅危惧種に指定されています。
ノルウェーにいるヒグマは「ヨーロッパヒグマ」で、個体差はあるものの北海道のエゾヒグマよりは小柄であるとされます。
ヴィンランド・サガ第16巻第114話 冬眠できなかったヒグマが向かって来たら…
遠くに熊がいるのが見えたが、熊は人を嫌うから襲ってくることは滅多にない…と思っていたところ、こっちに向かって来ます。
ヤバい、ヤバい!…と焦る仲間。
トルフィンは仲間を船に避難させるため、ひとり熊に立ちはだかり大声を上げて熊を威嚇。
熊が一瞬驚いて止まったため、森に帰ってくれるよう願いますが、熊は立ち上がり威嚇した後、トルフィンに襲い掛かかってきたため応戦します。
熊の第一撃は顔面パンチが多いと言われます。水平方向に殴打すると言われますが、ヴィンランド・サガでの戦闘シーンでも、左手(左前脚)でトルフィンの顔面に向かって殴打しています。
ヴィンランド・サガ第16巻第114話 トルケル戦のように攻撃の軌道に刃を立て反撃するトルフィン
瞬時に攻撃の方向を見極めてナイフを右から左手に持ち替え、吹き飛ばされないよう右手で左前腕をガッチリ固定して刃先を熊の攻撃の軌道に滑らせ反撃します。
深く刃を立てたらナイフごと持っていかれてしまうため、傷は浅いです。
熊が食害目的で人を襲うケースはまれで、人が危害を加えてこないと判断したらそれ以上攻撃してこないことが多いと言われます。
そのため、地面に伏して頭と首の後ろを守る防御姿勢を取ることで、顔面を引っかかれて失明するなどの重傷は免れる可能性が高いとされています。
ただし、冬眠に失敗した熊が襲ってきた場合は食害目的の可能性があり非常に危険です。
獲物に執着するため、一度獲物として認識されたら終わりです。
ヴィンランド・サガ第16巻第114話 目潰しで隙を作り頭を攻撃するも刃が通らず
ゴールデンカムイでもヒグマが目の前で立ち上がる行動がありますが、ヴィンランド・サガでも同じようにヒグマが目の前で立ち上がる行動が描写されています。
熊の威嚇行動として、すぐ目の前まで突進してきたと思ったら突然反転したり止まったりする威嚇突進(ブラフチャージ)などもあります。
残念ながらこの個体は襲う気満々なので、トルフィンはなんとか撃退しようと奮戦し、隙をついて
ナイフを頭に突き立てますが、やはり刃が通りません。
その後、再び立ち上がったヒグマをヒルドが弩(クロスボウ)で心臓を撃ち抜き仕留めます。
ちなみに、日本の警察官の拳銃の威力は200~300ジュール程度ですが、狩猟タイプの大型クロスボウは300~400ジュール以上の威力と言われます。
たとえヒグマ相手でも、急所を撃ち抜けば有効です。
戦闘描写がすごいヴィンランド・サガ。ヒグマとの戦闘シーンは第16巻に。
刃物で熊を撃退した事例
国内でヒグマに襲撃されたもののナイフで応戦して撃退した事例があります。
2023年10月31日の午前10時半頃、北海道松前郡福島町の大千軒岳(標高1072メートル)を登っていた消防隊員3人のグループがヒグマに襲われました。
登山道を一列に並んで歩いていた時に最後尾の男性が襲撃され、先頭の男性が刃渡り5センチのナイフで仲間を助けようと右手にナイフを持ち、熊の右目に向かって渾身の一撃を放つも、カツンッと目元の骨で弾かれてしまいます。
熊が標的を変え反撃してきたため、熊の喉元に突き刺し、熊は首にナイフが刺さったまま逃げていきました。襲われた2人は運よく軽傷で済みましたが、この熊が息絶えた場所から30mのところに29日から行方不明になっていた北海道大学の学生の遺体が見つかり、解剖の結果、熊の胃の中から見つかった遺体の一部が学生のものと一致した事件があります。
撃退には熊スプレーを
熊の個性も、襲ってくる目的もそれぞれであるため、撃退出来る可能性はおそらく攻撃の強弱ではないでしょう。
威嚇のつもりで近づいたら思わぬ反撃でびっくりして戦意喪失するのもいれば、怒って攻撃開始するのもいますが、いずれにしても人間の攻撃なんて基本全く効いていません。
食べる目的でない限りは最初の一撃若しくは数回の攻撃で立ち去ることが多いです。
食べる目的なら…熊の戦意を削ぐ反撃が必要かもしれませんね。
とはいえ、護身用という目的で刃物を携帯するのは法的には正当な理由にならないです。
5cmのツールナイフでも軽犯罪法違反、刃渡りの長いサバイバルナイフなら銃刀法違反です。
もちろん、山菜採りやキャンプ等のアウトドアで使用する正当な目的なら別ですが、護身目的ならちょっと高くても熊撃退スプレーを携帯しましょう。
熊とナイフで戦うのはやめましょう。
コメント